生成AIと音楽について思うこと

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感想文

JASRAC から「生成 AI と著作権の問題に関する基本的な考え方」という文章が公開されていたので、読みながら・色々頭の中を整理しつつ書いた。

前提

  • これはなんらかの立場を表明するものではなく、今日時点で抱いている感想です。
  • 私は一部楽曲の著作権管理を JASRAC に信託している立場であり、著作物の利用に対して適正な対価が支払われることは重要だと考えています。
  • 私にとって音楽制作は主業ではありません。
  • 音楽についての話で、イラストや文書など別の種類の著作物については考慮していません。

以下、順序つきのヘッダは引用です。

1 人間の創造性を尊重し、創造のサイクルとの調和を図ることが必要です。

生成 AI の開発・利用は、創造のサイクルとの調和の取れたものであれば、クリエイターにとっても、文化の発展にとっても有益なものとなり得ます。

しかし、クリエイターの生み出した文化的所産である著作物が生成 AI によって人間とは桁違いの規模・スピードで際限なく学習利用され、その結果として著作物に代替し得る AI 生成物が大量に流通することになれば、創造のサイクルが破壊され、文化芸術の持続的発展を阻害することが懸念されます。

  • 「何かをつくる仕事」には二種類あると思っていて、それは「クリエイター」と「アーティスト」に大別できる。

    • クライアントの要望に沿って何かを作るのは「クリエイター」、自らが表現したいものを勝手に作るのは「アーティスト」。

      • もちろんこの区切りは曖昧で、クライアントワークの多くはその人に頼む理由が、つまりその人の「アーティスト性」への期待が少なからずあるのが普通なので、あとは制作側にどの程度裁量があるかが、クリエイター的仕事とアーティスト的仕事の分かれ目になる。
  • で、著作物に代替し得る AI 生成物が大量に流通することで、特に価値が毀損されるのはここでいう「クリエイター」になるわけだけど、じゃあ「アーティスト」にこの影響が及ぶのかというと、少なくともかなり時間が掛かるだろうなと思っている。

    • アーティスト性は著作物だけでなく、著作者の人間性などの、著作物を取り巻く環境(?)まで包含するものだと思う。
    • なので、AI が文化芸術としての音楽の持続的発展を阻害するとは思わないかな。
      • 画一的な AI 生成物にはない先鋭的なものを求めるようになれば、むしろ促進するかも。
  • あと、これは楽観的かもしれないけど、音楽において著作物に代替し得る AI 生成物が大量に流通する状況になるのは、まだかなり先のことだと思う。

2 フリーライドが容認されるとすればフェアではありません。

著作権法第 30 条の 4 の規定によって、営利目的の生成 AI 開発に伴う著作物利用についてまで原則として自由に行うことが認められるとすれば、多くのクリエイターの努力と才能と労力へのフリーライド(ただ乗り)を容認するものにほかならず、フェアではありません。

そのような AI 開発事業者によるフリーライドが日本においては容認されるとする見解が散見されるため、大きな懸念を抱かざるを得ません。

  • 法律は素人なのでただの感想だけど、著作権法第 30 条の 4 を素直に読んだらそうなるよね。

  • フェアかどうかについてはいろんな意見がありそうだけど、人間が「曲作りの勉強のために、世にあるいろんな曲を聴く」なんてのはよくある話で、これも似たようなものではないかなと思う。

    • これってそんなに責められるべきことかなと思ってしまう。

3  AI には国境がないので、国際的な調和を確保すべきです。

政府の AI 戦略会議がいうとおり、「AI には国境はなく、国際的な流通が容易であり世界中に影響を及ぼし」ますので、「国際的に共通の大きな考え方・ルールの整合性」を確保していく必要があります。G7 広島首脳コミュニケで掲げられた「責任ある AI の推進」、「透明性の促進」といった観点から様々な課題に対処すべきです。

生成 AI の学習に伴う著作物の利用について、「著作物に表現された思想又は感情」の享受の目的がないという整理の下に著作権を制限する法的枠組みを持つ国は G7 の中で日本だけであり、調和の観点から大きな懸念があります。

  • (前略)著作権を制限する法的枠組みを持つ国は G7 の中で日本だけというのをうまく活用する方法を考えたほうがよさそうな気がするけどなぁ。

4 クリエイターの声を聴き、懸念の解消を図るべきです。

上記 1 から 3 までのとおり、現状では、多くのクリエイターが生成 AI について懸念を抱いています。

国内の議論を充実させ、国際的な調和を図るためには、クリエイターの意見を広く丁寧に聴くことが欠かせません。

そして、世界中のクリエイターが安心して創作活動に打ち込むことができるよう、その懸念の解消を図ることが文化芸術及びコンテンツビジネスの持続的発展のために必要です。

  • 「文化芸術」と「コンテンツビジネス」を一絡げにするのは無理があるのでは?
    • 仮に AI によってコンテンツビジネスが完全に破壊されたとしても、「文化芸術としての音楽」が破壊されるわけではない。
    • JASRAC はコンテンツビジネスの番人なのだが、それと文化としての音楽を、おそらくは意図的に混同しているのが、余計な反感を買う原因ではないかと思う。

その他

  • AI がもたらす弊害は多くは使い方の問題であって、道具が悪いわけではない、という考え。
    • AI の利用や、生成物の利用・または生成物そのものになんらかの制限をかけるのが現実的なところではないかと思う。
  • AI と差別化するためにアーティスト性を纏う必要が出てくる。

個人的には生成 AI が今後より発展していく中で、アーティストの良きパートナーになってくれるといいなと思っています。